「カルメネーレ」というブドウ品種はご存じですか？元々はボルドー原産のこの葡萄ですが、すでにボルドーでは花ふるいなどの病気で絶滅しフランスでは現在ほとんど栽培されていません。

今はチリが主な生産地となり、イタリアの一部地域で栽培されています。

このカルメネーレ種にいち早く着目し、ヴェネト州で世界に誇るカルメネーレのワインを生み出そうと試みるのが、当店でも人気のソアーヴェの作り手「INAMA（イナマ）」です。　　

舞台に選んだのはヴェネト州コッリヴェーリチ地区。すり鉢状のような丘陵地になっており昼は強い日照が降り注ぎ温暖。夕方には早く日が沈み夜はミネラルを豊富に含んだ風が通ります。畑は石灰質土壌の上に赤い粘土質土壌が層になっており、葡萄の根っこからは様々な養分を取り込みます。

 ボルドー品種の中でも最も晩熟で繊細なカルメネーレ。しっかりと熟す前に収穫するとピーマンのような青臭い香りが強くなり単一品種ワインで使うのはとても難しい。イタリアのほかの地域では他の品種の補助的役割で使われることが多い品種です。

イナマはあえてこのカルメネーレ種をワインの主役にします。温暖な気候のコッリヴェーリチはカルメネーレ種をしっかりと熟し、夜間の風は葡萄の病気を防ぎます。広い畑であっても選定、収穫は全て手作業。1本ずつ行います。加えて、オーガニック。

イナマのワインは全てオーガニック栽培ですが、たとえ病気にかかりやすい葡萄であってもその信念と自然への敬意は変えません。近年ではボルドーのグランクリュワインを複数手掛ける名醸造家がコンサルタントとして参入し、世界で高い評価を受ける赤ワインを生み出しています。

 イナマの赤ワイン5種のうち、カルメネーレ主体のワインは3種類。そのうち2種類がカルメネーレ単一で作られます。エントリークラスの赤ワインが、当店でも人気の「カルメネーレ・ピゥ」。「ピゥ」はため息を表しており、飲んだら溜息の出るほど魅了される美味しいワインという意味が込められています。

 エントリークラスのワインながらも味わいは秀逸。しっかりと熟したカルメネーレ種から生まれる、スミレ、ブラックベリー、ココアの香り。嫌な青臭さが殆どありません。しっかりとしたタンニンがありながらも、フレッシュな酸が広がり余韻に残る複雑味はカルメネーレ種独自のもの。メルローを補助品種として使用することで、カルメネーレ種の強いスパイシーな個性ををメルローの丸みのある優しさで包み込みます。

元々は100％樽熟成をしていましたが、2019年VTGからは20％ステンレス、80％木樽熟成に変更。私はかれこれ6年以上イナマ愛飲家ですが、ピゥはこの醸造の変更でエレガントな味わいへと昇華したと感じます。

 ということで、今週はこのイナマのカルメネーレ・ピゥを試飲でご提供します。イタリアでは大変希少なカルメネーレ種ワイン。是非この機会にご賞味ください。そしてそして、カルメネーレ・ピゥを試した後に是非飲んでいただきたいのが、イナマの上級キュベである「ブラディッシズモ」と「オラトリオ」。オラトリオはその年の最上級のカルメネーレのみを厳選し、出来の良い年にしか作られない希少キュベです。

凝縮感、豊満、複雑味、余韻。カルメネーレ種をこのレベルまで引き上げられるのは恐らくイナマしかいないでしょう。値段は1万円ほどと高価ですが、価格が高騰するボルドーの同じ価格のワインを飲むなら断然このオラトリオをお勧めします。

先日カルメネーレ・ピゥを気に入ってくださったお客様がイナマをラインでご購入くださりオラトリオ、ブラディッシズモは来週末に再入荷予定です。是非まずはカルメネーレ・ピゥでそのポテンシャルを味わってみてください。

 最後に、イナマらしさを物語るのが、オーガニックの話。長年オーガニック栽培ですがオーガニック認証を取らずリーフマークもラベルにありません。彼らは、「オーガニックワイン」と定義されるのではなく、イナマのワインとして評価されたいという強い意志があります。

オーナーのステファノ・イナマはまぁ頑固なイタリア親父であるとともに、信念を貫く哲学者。3人の息子たちもその意志を受け継いでおり、一般的な名称のワイン（例えばソアヴェワイン、オーガニックワイン、ボルドースタイルワイン等）として定義されるのを良しとせず、「イナマ」としてのアイデンティティーをワインへと表現する作り手です。　　　　

彼らに会うと、ワインへの強い自信とイナマワインへの深い愛情がみなぎり、中途半端な気持ちでお客様にご提案してはいけない、といつも身が引き締まります。 そんな当店の一押しワイナリー、イナマのワインを是非お試しくださいね。本日晴天！16時まで営業します。ご来店お待ちしております。

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